試し書きよるさんぽ
商店街を歩いていると真上にひとがいた。
バイト先の人に誘われて東神奈川まで呑みにでたあと、帰路について、ぶらりとよってみた道先で、笑っているのか泣いているのかわからない女のひとがたたずんでいる。顔はまったく見えないけど、古めかしい格好をしている。思わずじっとかたまって見ていると、帰宅途中のうつむいたひとたちが何人も通り過ぎた。みんな一様にしたを向いて、帰るひとたちはみんな静かだ。ギターを持った女の子が通っていった。かつかつ靴音をたてて急ぎ足のおじさんがそのあとを歩いて行った。帰るということは、ゆくさきがあってもどるさきがあるってことなんだ。どのひとも足取りはたしかで、迷うことがなかった。酔っ払ってて足元おぼつかないおじさんはいたけど。
とちゅうでもんじゃ焼きなのか果物屋なのかわからないお店があって、店先に並んでるオレンジとかレモンが、照明をてりかえしてぴかぴかしていた。
もっと奥にいくとおでん屋さんがあって、露店だからひとがむきだしで座っていた。進んでいこうとすると先をゆくおじさんがそこに入って、なにやら常連らしいあいさつをしていた。笑い声がきこえてなんだか気後れしてシャッターのしまった店の軒先を借りてごまかした。
このへんを歩くとなんだか夜中なのにほっとするんです。
ひとりじゃない気がする。誰とも歩いてなくても。